「アフリカのいまを知ろう」(山田肖子)

アフリカに学ぼう!

「アフリカのいまを知ろう」
(山田肖子)岩波ジュニア新書

本書を読んで気付きました。
私はアフリカについて
何も知らないということを
(もっとも、他の国々についても
無知なのですが)。
アフリカの国々には
不自然なくらい
直線的な国境線があります。
それが西欧諸国による
植民地の境界の名残であったとは!
こんな簡単なことも
知らなかったとは!

本書の内容は11人の研究者への
インタビューから成り立っています。
顔ぶれは実に多彩です。
経済学者、文化人類学者、政治学者、
理学者、医学者、民俗芸術学者、文学者、
地理学者…。
それらの研究者による
様々なアフリカ観が
紹介されていますが、
共通している点がいくつかあります。

一点目。
民族の対立は植民地支配の影響が深く、
その責任は先進国にもあるということ。
紛争が続くアフリカの現状は複雑です。
しかし、ルワンダの紛争なども
「ツチ族とフツ族の…」と
民族対立にすり替えられています。
部族のレッテルが利用され、
紛争に結びついているという
背景が見えてきます。
そしてそれは植民地期以来の
歴史的要因が大きいのです。

二点目。
人が幸福に生きていることと
貧しいということは
区別されるべきであるということ。
それぞれの場所で
生きる人の「幸福度」を、
どのくらい心の底から
笑っているかの尺度で比べたら、
アフリカは
かなり「笑度」が高いだろう、
少なくとも日本よりは、と
文化人類学者は指摘しています。

三点目。
我々の合理的な技術を
アフリカにそのまま持ち込むことは
慎むべきであるということ。
単作による近代農法を持ち込んだら、
害虫にほとんど
やられてしまったそうです。
アフリカ人が混作を行っているのは
リスクの分散であり、
これこそが「合理的」と
研究者は説明します。
けっしてアフリカの人々や産業が
遅れているのではないのです。

「かわいそう」という目で
見てはいけないのです。
むしろ「学びたい」という気持ちで
接することが大切なのでしょう。
それにしてもメディアは
浅薄な情報しか
流していないことに驚かされます。
やはり本を読むことは
大切なのだと感じた次第です。

中学生にぜひ薦めたいと思います。
そして、私自身も岩波ジュニア新書の、
まだあまり知られていない良書を、
もっともっと探して
読んでみたいと思います。

(2019.7.30)

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